シスレー ポール=マルリの洪水と小舟

絵画

モネルノワールバジールと同じ画塾に通い「グレール画塾の4人組」のいわれるアルフレッド・シスレーの作品で印象派の特徴がよくでている作品「ポール=マルリの洪水と小舟」です。

シスレーモネルノワールほど有名ではありませんが、同じ印象派の画家ピサロから最も印象派的な画風の画家と言われています。

本作品は、1876年に起こったセーヌ川の大氾濫後の情景を描いた作品で、シスレーは本作品以外にもその洪水の様子を何作か制作しています。

作品:ポール=マルリの洪水と子舟

ポール=マルリとはセーヌ川に隣接した地区の名前で、1876年に起きたセーヌ川の氾濫で洪水の被害にあった地区です。

シスレーは洪水の被害にあった人々が逞しく生きる様子と非日常のなかでも青く輝く空の普遍性が対照的に描かれています。

ポール=マルリの洪水と小舟
1876年

1876年
アルフレッド・シスレー
「ポール=マルリの洪水と小舟」
オルセー美術館蔵(フランス パリ)

家屋と水の対比

画面の左から家屋を配置し、右半分は水浸しになった地面と青空が描かれています。

家屋は一階がワイン商の家屋で二階は宿屋だったようで、建物は現存しています。

シスレーは家屋を水や空とは違う硬い印象をあたえる筆跡で描き、その普段と変わらない様子、永続性を表現、反対に光を反射してゆらぐ水の表現と対照的な表現をしています。

小舟と人々の描写

シスレーは小舟と人々を描くことで、洪水で人々の日常が変容してしまったこと。そんな状況でも人々は逞しく生活をしようとしている様子を描こうとしたと言われています。

家屋の前で小舟上で話す2人のほか並木の中を小舟を漕いでいる人の様子も描かれ、洪水のなかでも生活を取り戻そうとしている人々の様子が描かれています。

水面と青空の描写

本作品では青空の描写が画面の大部分を占めています。また、ゆらぐ水面は洪水で濁った様子で描かれ当時の様子がよく描写されています。

水面はゆらぎや水の濁りを表現するため荒い筆跡で描かれており、いつか引いていく水面のはかなさを感じさせます。

青空は非常に明るい青色で描かれ、洪水などの災害で人々の日常は変容を強いられますが、そんな事には関係なく空は明るく地上を照らす普遍的な存在として描かれているような印象を受けます。

シスレーは、1876年のセーヌ川の氾濫による洪水を何作が描いていますが、本作品の情景を別の角度から、また全く違う暗いイメージで描いた作品も制作しています。

ポール=マルリの洪水
1876年

1876年
アルフレッド・シスレー
「ポール=マルリの洪水」
オルセー美術館蔵(フランス パリ)

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