ヤン・ステーン 乱れた家族(贅沢にご用心)

絵画

17世紀のバロック期のオランダで活躍した画家ヤン・ステーンの作品「乱れた家族」は、原題は「逆さまの家族」という題名でした。

本作品は「贅沢にご用心」との題名でも呼ばれることがあります。

ヤン・ステーンは主に庶民の普段の生活を題材に800点近い作品を制作し、約350点の作品が現存しています。

彼の作品は、結婚式やピクニック、酒場の様子や酔っ払いなどの庶民のにぎやかな様子を描いた作品が多く、オランダのことわざで”ステンの一家”という賑やかな場面を表現することわざにもなっています。

ヤン・ステーンは宿屋・飲み屋を営んでおり、そこでの客の様子を参考に作品を描いたとも言われています。

自画像」(ヤン・ステーン
1670年頃

1670年頃
ヤン・ステーン
「自画像」
アムステルダム国立美術館蔵
(オランダ アムステルダム)

作品 乱れた家族(贅沢にご用心)

ヤン・ステーンは、庶民たちが酒を飲んで騒いでいる様子や騒々しく賑やかな作品をのこしていますが、作品はそんな賑やかな場面への批判的な意味を込めて描いていると考えられています。

本作品も騒がしく、散らかった部屋のなかの人々の様子を批判的に描いています。

乱れた家族(贅沢にご用心)
1663年

1663年
ヤン・ステーン
「乱れた家族(贅沢にご用心)」
美術史美術館蔵(オーストリア ウィーン)

作品中の人物や物の表現にはそれぞれ教訓的なモチーフを持たせて描かれています。

真ん中に座る若い女性

作品の真ん中に座ってワイングラスを持っている若い女性は娼婦で、享楽の象徴として描かれています。

女性と戯れる男性と聖職者

中央の女性の隣に座り、戯れているように見える男性は、ヤン・ステーンが自分をモデルに描いているされています。女性への愛の証として贈るバラの花束を持っています。

背後から説教をしている聖職者に対して、笑みを浮かべてあしらっているような表情で描かれています。

聖職者は道徳の象徴として描かれており、肩に乗せているアヒルは愚者の象徴として描かれています。

居眠りする母親と子供たち

居眠りしてしまった母親の横で子供たちが悪さしている様子が描かれています。

女の子は棚から何かを盗もうとしており、男の子はパイプで煙草を吸おうとしています。

これは、オランダのことわざ”機会が泥棒を作る”を表現しています。また、母親の後ろには鍵がかかっていますが、当時、オランダでは鍵は家事などの家の事の責任者を意味するもので、居眠りする女性が母親であることを示しています。

豚とバラ

作品右下には豚とバラが描かれています。

オランダには”豚の前にバラを撒くな”という「豚に真珠」と同じ意味のことわざがあり、そのことわざを暗示させています。

散らかった部屋と天井からつるされている籠

幼児用の椅子に座った子がネックレスや食器で遊んでいます。食器を床に投げてツボが倒れて中身がこぼれてしまっています。

酒樽からも酒がでてきてしまい、部屋の中が散らかり放題となっています。

天井からは、細いひもで金づちや剣が入った籠が吊るされ、今にも人々の頭に落ちそうです。

これは、享楽に溺れる人々に罰が下ることを意味しています。

時計をいじっている猿

作品の右上には猿が時計で遊んでいるようです。

猿は愚行の象徴として描かれており、時計を止めても時間をとめることはできず、享楽に溺れた時間はもどらないと表現しています。

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