伊藤若冲 「升目描き」技法

絵画

ニワトリの絵で人気の江戸中期の画家伊藤若冲は、晩年、「升目描き」という技法で描いた作品を残しています。

「升目描き」技法

伊藤若冲が独自に開発した技法と考えられており、画面全体に約1cm角の正方形を描き、色彩をいれていくことで作品を完成させていきます。

白象群獣図(はくぞうぐんじゅうず) より

升目描きの制作方法

1.画面全体に約1cm間隔の線を引き、方眼(正方形)を作成

2.絵柄に合わせて淡い色を薄く塗り下地を作る

3.方眼(正方形)一つ一つを濃い目の色で塗り込む

4.その正方形の隅により濃い色を付けて方眼一つがが完成

5.その方眼(正方形)に必要に応じて色付け、陰影を付け調整していく

かなりの労力と時間を要する技法で、伊藤若冲が独自に開発した画法と考えられています。

「白象群獣図」(はくぞうぐんじゅうず)

約6万の方眼で描かれています。

1772~1787年頃
「白象群獣図」(はくぞうぐんじゅうず)
伊藤若冲
個人所蔵

伊藤若冲工房の作?

升目描きで制作された作品は現在、上記の「白象群獣図」(個人所蔵)と①「樹花鳥獣図屏風」(静岡県立美術館所蔵)②「鳥獣花木図屏風」(出光美術館)の3点の現存が確認されています。

樹花鳥獣図屏風」(静岡県立美術館所蔵)

(上が右、下が左の屏風です)

②「鳥獣花木図屏風」(出光美術館所蔵)

(上が右、下が左の屏風です)

この2点の屏風に関しては、下絵は伊藤若冲が手掛けたものの彩色に関しては、最初の作品「白象群獣図」と比較して粗い部分が多いため弟子たちが手掛けたと見らています。

「白象群獣図」 で描かれた熊

「樹花鳥獣図屏風」 で描かれている熊

どちらの作品にも熊が描かれているので比べると、 「白象群獣図」 で描かれた熊 は口元や腹の白っぽい部分を灰色のぼかしによって体毛の黒から連続的な色の変化が表現されています。

2点の 屏風に描かれている熊は、升目に沿って機械的に塗分けられており明確に彩色の違いがあるため、彩色に関しては伊藤若冲の弟子によるものではないかと考えられています。

※当時は、複数の弟子を抱え、工房制作が行われており伊藤若冲も同様に工房制作を行っていようです。

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