ベルト・モリゾ 「ロリアンの小さな港」

絵画

印象派の女流画家で、エドゥアール・マネに師事し複数のマネの作品のモデルも務めたベルト・モリゾのキャリア初期の作品「ロリアンの小さな港」です。

ロリアンとは、フランス北西部のブルターニュ地方にある港町で海軍基地がある町です。

作品中で描かれている女性はモリゾの姉のベルト・エドマです。

モリゾと共に画家を志し、サロンに入選するなどその才能も認められていましたが、海軍将校と結婚しロリアンに移り住んでいました。

モリゾは度々、エドマを訪ねるためロリアンに来ては姉やその子供をモデルに作品を制作しています。

作品 ロリアンの小さな港

本作品はベルト・モリゾの初期の作品であるとともに、10年以上も一緒に画家を志していた姉が結婚して画家を諦めなければならない様子を描いた作品です。

ロリアンの小さな港
1869年

1869年
ベルト・モリゾ
「ロリアンの小さな港」
ナショナル・ギャラリー(アメリカ ワシントンD.C.)

キャリア初期の作品ですが、モリゾの作風の特徴である伸びのある大胆で即興的な筆触が見られます。

姉の描写も表情を詳細に描くのではなく、即興的なタッチで描いています。即興的なタッチですが、あまり気が晴れていないのが分かります。

モリゾは、共に画家を志し才能も認められていた姉が結婚とともに画家の道を諦めざる得ない事に大きく落胆していたようです。

本作品には、画家の道を諦めた姉エドマの気持ちとモリゾ自身の気持ちを投影した作品であることが分かります。

モデルを右端に描き、画面全体に大きな空間を作っている描写は、どこか空虚な印象を受けます。

また、停泊しているすべての船は帆が閉じられ、出航の気配もありません。姉エドマが結婚により画家の道を諦めたことを表現しているように思えます。

当時は、女性が画家を志すこと自体がまだ一般的ではなく、さらに結婚後も画家として活躍することは非常に難しい社会でした。

姉エドマは結婚で画家の道を諦めざるえない状況でしたが、モリゾ自身は、師であるエドゥアール・マネの弟ウジェーヌ・マネと結婚し、結婚後も画家として活躍します。

ブージヴァルの庭のウジェーヌ・マネと娘
1881年

1881年
ベルト・モリゾ
「ブージヴァルの庭のウジェーヌ・マネと娘」
マルモッタン美術館蔵(フランス パリ)
Bitly

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