印象派展の第一回から出品しクロード・モネやルノワールとともに印象派の初期からのメンバーであるエドガー・ドガの作品「田舎の競馬場にて」です。
「競馬場の馬車」「プロヴァンスの競馬場」とも呼ばれています。
本作品は、第一回の印象派展にドガが出品した作品でもあります。
エドガー・ドガはバレリーナの作品で有名ですが、上流階級出身の彼は、当時上流階級の間で人気が出始めていた競馬場の作品も多く制作しています。
ドガは競馬のレース自体には興味がなかったらしく、彼の競馬場を描いた作品の多くはレース前の騎手や競走馬の様子や、観客の様子を描いたものが多くなっています。
作品 「田舎の競馬場にて」
本作品のモデルで馬車に乗っている夫妻は夫がドガの幼いころの友人であり、ドガが夫妻を訪ねた際に本作品を制作したとされています。
「田舎の競馬場にて」
(1869年頃)
馬車に乗って母乳を飲む赤ん坊を見ている男性はドガの幼い頃からの友人でポール・ヴァルパンソンという人物で、新古典主義の巨匠アングルの初期の作品「ヴァルパンソンの浴女」の作品名の由来となった人物です。
「ヴァルパソンの浴女」
(1808年)
ヴァルパンソンが購入・所有していたことから作品名に名前がつけられています。
ヴァルパンソンが見つめる先に母乳を飲む赤ん坊と女性二人が描かれていますが、母乳をあげている女性は乳母でそれを見ている女性がヴァルパソソン夫人です。
当時の上流階級では、授乳は乳母のするものとし母親がすることはありませんでした。
本作品は競馬場の様子を描いていますが、馬車にのるヴァルパンソン夫妻をメインに画面右側の前面に描き、競馬場自体は小さく背景として描かれています。
右側に近影、左側に遠景を描き、画面を非対称とする描写は浮世絵の影響とも言われ、当時の西洋絵画では奇抜な構図の作品となっております。
1874年の第一回印象派展に、本作品の購入者から借り受け出品していることから、ドガ自身も気に入っていた作品だったようです。
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