クエンティン・マサイス 「両替商とその妻」

絵画

クエンティン・マサイスは、ルネサンス期の画家で、主にフランドル地方(現在のオランダ南部、ベルギー西部、フランス北部の地域)で活躍しました。

イタリアルネサンスと北方ルネサンスを融合させた画家として有名です。

本作品は、北方ルネサンス特有の細部まで緻密に描写しつつ作品中にさまざまな寓意と教訓を表現した作品となっています。

両替商とその妻

マサイスは現在のベルギー、アントワープで活躍、早い段階から画家としての名声を得ていました。

当時のアントワープは国際交易都市として栄えており、多くの両替商が活躍しており、本作品はその両替商を描いた風俗画とされています。

両替商とその妻
1514年

1514年
クエンティン・マサイス
「両替商とその妻」
ルーヴル美術館蔵(フランス パリ)

細部までとても緻密に描かれており、主人の手に浮き上がる血管まで判別できます。

寓意と教訓の表現

本作品は北方ルネサンスでよく表現された寓意が緻密な描写により散りばめられています。

硬貨と天秤

主人は天秤を使って硬貨の重さを量っています。天秤は善悪をはかる象徴で、この作品では両替商としての倫理観を象徴しているとされています。

硬貨や布の上の真珠と主人がはめている指輪は、世俗的な欲望を表しています。

時祷書(じとうしょ)(キリスト教徒のための祈祷書)

両替商の妻は、当時流行していたキリスト教徒の祈祷書(時祷書:死者への祈りの言葉、聖歌などいろいろな文言や聖人の絵などが記載されいた)をめくっています。

これは、信仰や信心深さを表現しています。

しかし、彼女の視線は主人の手元や硬貨、真珠ばかり見ており、物欲が信仰を邪魔していることを表しています。

棚におかれた物

水差し

棚の上段のガラスの水差しは聖母の純潔を表す物です。

ロザリオ

作品では十字架が描かれていませんが、ロザリオがつるされています。ロザリオも聖母の純潔を表すようです。

リンゴ

リンゴはエデンの園でアダムとイブが食べてはいけないリンゴを食べてしまうという原罪を表します。

火の消えたロウソク

火の消えたロウソクは虚栄心と死の象徴とされています。

作品中の自画像

机の上に凸面鏡がおかれ鏡の中に窓と人物が描かれています。

窓の枠は十字架をあらわし、読書をする人物が映っています。

鏡に映っている人物はマサイスの自画像ではないかと考えられています。「ヤン・ファン・エイクアルノルフィーニ夫婦の肖像」のようにフランドル地方でよく描かれた手法のようです。

また、窓の外に会話している老人と若者が描かれています。

マサイスレオナルド・ダ・ヴィンチと交流しており、レオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けていると言われ、ルネサンスと北方ルネサンスを融合させた画家とされ美術史でも貴重な存在とされています。

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