ジョセフ・ライト 賢者の石を探す錬金術師

絵画

18世紀のイギリスの画家で、科学がそれまでの宗教的価値観を打破しようとしていた啓蒙時代の画家です。

ライトは、産業革命の精神を描いた画家として称され、科学的発明や研究事案を作品にした画家とされています。

また、ライトの作品は優れた明暗対比による表現で高い評価を受けています。

本作品でライトは、錬金術師が賢者の石を探している際にリンという新たな化学物質を発見した史実を描いています。

賢者の石とは、普通の石や金属を触媒して金に生成できる物質と考えられた石で、長い間存在が信じられて錬金術師達が追い求めていました。

自画像」(ジョセフ・ライト

1780年頃
ジョセフ・ライト
「自画像」
イエール大学所蔵

作品 賢者の石を探す錬金術師

本作品は1669年にドイツ ハンブルグの錬金術師ヘニッヒ・ブラントが人間の尿からリンを発見した史実を描いたと考えられています。

錬金術師のヘニッヒ・ブラントは人間の尿から賢者の石を見つけることが出来ると信じており、大量の量の尿を煮詰める実験をしていたようで、おそらく実験室は酷い環境だったと考えられます。

ライトは、そんな環境の実験室ではなく神聖で神秘的な教会のなかのような部屋で実験が行われている様子を描いています。

フラスコの中の尿から分離されたリンが自然発光して錬金術師を照らしています。

ライトが得意とする明暗対比と室内のアーチ形の天井、窓から見える夜空などから、神秘的な印象を受けます。

ライトは、本作品の他、多くの科学的実験の様子を描いています。

彼の支援者には、磁器の工業製品化に成功したウェッジウッドや紡績工場のシステムを考案したアークライトなどで、多くの科学者と交流をもっていました。

その影響から科学的事案を描いた作品を多く残していますが、本作品では、科学実験が神聖な宗教的な環境下で神秘的に行われたような表現をしており、宗教的な価値観から科学的価値観への転換が以前難しいことを表現しているのだと考えられます。

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