ヨハネス・フェルメールの最初期の作品で、現存する作品のなかで唯一聖書の物語を題材にした作品「マルタとマリアの家のキリスト」です。
また、現存するフェルメールの作品のなかで最大の作品です。
フェルメール作品は風俗画が多くのこっていますが、当時は宗教画が一番価値が高いと考えられており、フェルメールもキャリア初期には宗教画の制作を試みていたと思われます。
また、本作品はルーベンスの弟子が描いた作品からの影響を受けたと言われています。
作品 マルタとマリアの家のキリスト
本作品は、熱心なイエス・キリストの信者であった姉マルタと妹マリアの家にイエス・キリストが訪れた際の聖書の話を描いています。
姉マルタはイエス・キリストをもてなそうとしているのに対して、妹マリアはイエス・キリストの話に聞き入りもてなしを手伝ってくれず咎めたところ、イエス・キリストが「マリアは正しい。マリアは正しい唯一のことを選択した、マルタは多くのものに心を配り、思い煩っている」とマルタを諭した話です。
「マルタとマリアの家のキリスト」
(1654-1656年)
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ヨハネス・フェルメール
「マルタとマリアの家のキリスト」
スコットランド国立美術館蔵(スコットランド エディンバラ)
フェルメールは光の表現に卓越した画家ですが、キャリア最初期の本作品でも光の表現による効果を試みている。
キリストの顔と手には影を描かずに明るさを描写している一方で姉妹の顔には影の表現がります。
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イエス・キリストの足元から顔に向かうにつれ徐々に明るくなる描写をしています。
また、白いテーブルクロスなどでキリストの手と顔に視線が行くような描写で視線を誘導しています。
また、マルタが持っているパンは世俗を意味しており、白いテーブルクロスで神聖さと対比していると言われます。
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イエス・キリストの座っている姿勢、キリストの右腕がマルタの左腕と比べると短く描かれている、マルタの右手が描かれていないなど、作品としてまだバランスが悪い面が指摘されています。
また、本作品はルーベンスの弟子エラスムス・クウェリヌスが描いた作品の影響を受けているとされており、フェルメールがキャリア初期に自身の作品の方向性を試行錯誤していたことが伺えます。
「マルタとマリアの家のキリスト」(作:エラスムス・クウェリヌス)
(1645年頃)
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エラスムス・クウェリヌス
「マルタとマリアの家のキリスト」
ヴァランシエンヌ美術館蔵(フランス)
![](https://www16.a8.net/0.gif?a8mat=3ZB81O+5X57CI+54O2+62U35)
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