この作品は、「金をはかる女」と呼ばれていたこともありましたが、調査の結果、天秤には何も乗せられていないことが判明しています。
画中の女性がはかっているものは、背後の壁に描かれている絵の「最後の審判」から人間の魂ではないかと考えられています。
手本とした絵
フェルメールは本作品を作成するにあったて、ピーテル・デ・ホーホの「金貨をはかる女」を手本としたと思われます。
「金貨を量る女」
(1664年頃)

ピーテル・デ・ホーホ
「金貨をはかる女」
国立美術館(ドイツ ベルリン)
デ・ホーホはフェルメールと同時代、同地区で活躍した画家で、フェルメールとお互いに影響しあったと考えられています。
17世紀、コインを量る事は、悪貨を見分けるため過程の主婦もおこなっており、家計を守る主婦を称えいるものとしても描かれていました。
背後の絵「最後の審判」
画中の女性の背後には、世界の終末に大天使ミカエルが人間の魂を天秤ではかり、天国行きと地獄行きに振り分けるという「最後の審判」の絵が飾られています。
「最後の審判」
(1467-1471年頃)

ハンス・メリック
「最後の審判」
グダニスク国立美術館(ポーランド グダニスク)
「天秤を持つ女」
(1662-1663年頃)

ヨハネス・フェルメール
「天秤を持つ女」
ナショナル・ギャラリー(アメリカ ワシントンD.C.)
背後の絵の大天使ミカエルの姿が見えず、ちょうど、女性自身がその箇所に重なっており、女性が天秤で人の魂をはかっているようにも見えます。

テーブルの上に宝石箱が描かれ、真珠の首飾りが見えます。これらの宝飾品で現世の利益やむなしさを表現しています。

消失点で効果的に強調

カーテンに遮られて、ようやく入り込んできた光が女性の手と天秤を照らし、画中画の額のちょうど左下に配置し、女性の視線を向けることで、消失点として効果的に天秤を強調しています。
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