スペインのバロック期の宮廷画家ディエゴ・ベラスケスの作品「バッカスの勝利」です。
作品名は他に「バッカスの祝杯」「バッカスの戴冠」などと呼ばれたりしています。
また、「酔っ払いたち」という題名で当時から親しまれていた作品です。
バッカスとはローマ神話のワインの神で、絵画の題材としてもよく描かれる神です。
本作品は、ベラスケスがマドリードに長期滞在中のルーベンスと親交を結んだ時期に描かれ、ルーベンスに進められたイタリア行きの前に制作した作品で、イタリアで出会うこととなるルネサンス作品の影響を受ける前のベラスケス初期の代表作とされています。
作品 バッカスの勝利
本作品は、マドリード滞在中のルーベンスに影響されて描いたベラスケスにとって神話を題材にした最初の作品です。
「バッカスの勝利」
(1628-1629年)

ディエゴ・ベラスケス
「バッカスの勝利」
プラド美術館蔵(スペイン マドリード)
中央で樽に腰かけている上半身裸の男性がバッカスで膝まづく男性にブドウの蔦の冠を被せています。ブドウの蔦や蔓はワインの神バッカスの象徴です。

バッカスの後ろで既にブドウの蔦の冠を被っている半裸の男性はサテュロスというギリシャ神話の半人半獣の精霊ですが、下半身の獣の部分は描かれていません。

ルーベンスの影響で神話画を描いたベラスケスですが、ルーベンスの作品と違い神や精霊を神々しく描くことなく一般の人と同様な様相で描いています。
バッカスの横でワインで酔っ払っている人々は当時のスペインの貧しい層の人々のようです。

本作品では左側にバッカスやサテュロスが描かれ、右側に当時の貧しい層の人々が描かれて対比されているようにも見えます。

宮廷画家のベラスケスはバッカスを自身の雇い主である当時の若き王フェリペ4世に見立て、人々に酒=施しや休息を与えている様子として描いたとも考えられます。
本作品はフェリペ4世も気に入り、王室の寝室に飾ってあったと言われています。

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