物の輪郭を明確にし、色彩によって対象物を表現しようとしたクロワニズム(総合主義)を確立したとされれるポール・ゴーギャンの作品「アルルの老婦人」です。
ゴーギャンは、フィンセント・ファン・ゴッホと南仏アルルで2ヵ月ほど共同生活をしており、2人で作品を制作しあったりしていました。
本作品「アルルの老婦人」は、共同生活の場となった黄色い家の近くの公園を描いた作品で、他の作品「アルルの夜のカフェで」にも登場するジヌー夫人が描かれています。
輪郭が明確に描かれ、遠近法ではなく色彩によって対処物が平面的に描かれるクロワニズム的な描写が確立する過程とされ、日本の浮世絵の影響もみられる作品と言われています。
作品 アルルの老婦人
本作品「アルルの老婦人」は、「アルルの病院の庭にて」とも呼ばれていますが、描かれているのはゴーギャンがゴッホと共同生活をしていた黄色い家の近くの公園です。
ゴッホもこの公園を描いており、また、作品に描かれているジヌー夫人も描いています。
「アルルの老婦人」
(1888年)
作品前面の茂みと赤色の柵で、鑑賞者と画面内の世界が別の世界であることを明確にしているような印象です。
茂みの後ろに描かれている二人の女性のうち、左手の女性は、「アルルの夜のカフェで」で描かれているジヌー夫人です。
「アルルの夜のカフェで」
(1888年)
本作品では、茂みと赤色の柵を境に左手に人物が描かれ、右手には対比した物が描かれています。
茂みの後ろの二人の婦人と対比して冬支度の為、藁をまかれた糸杉、奥の二人の夫人と対比して、池のなかに設置されている島、小道と池など対比しているようです。
画面全体が非遠近的、平面的に描かれており、一つの視点からの描写に留まらず、また輪郭を明確に描き、単純化した色彩で対象物を描いており、その後のクロワニズム確立への過程が感じられます。
また、平面的で単純化した色彩は、当時、フランスで流行していた日本の浮世絵の影響とも言われています。
本作品は、ゴーギャンがフィンセント・ファン・ゴッホと南仏アルルで共同生活をしていた際に描いており、ゴッホもこの公園やジヌー夫人を描いています。
「アルルの女(ジヌー夫人)」(フィンセント・ファン・ゴッホ)
(1888年)
「アルルの公園の入口」(フィンセント・ファン・ゴッホ)
(1888年)
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