ルネサンス期のフランドル地方の画家クエンティン・マサイスの最も有名な作品「醜女の肖像」です。
マサイスは、レオナルド・ダ・ヴィンチと交流を持っておいたことが分かっており、レオナルド・ダ・ヴィンチが本作品の素描を描いていたことから、本作品は18世紀ぐらいまでレオナルド・ダ・ヴィンチの作品と考えられていました。
マサイスはフランドル地方の画家の特徴である精密描写とイタリアルネサンスを融合させた画家として美術史上でも貴重な画家とされています。
本作品でも精密描写とルネサンスが融合されています。
作品 醜女の肖像
本作品が実際の女性をモデルにしたものか、あくまで想像上のものかは判明していませんが年老いた女性が若い女性の格好をして、男に媚を見せる姿を皮肉を込めて描いたものとされています。
「醜女の肖像」
(1513年頃)
インパクトがある描写なので、作品細部に視線が行きづらいですが、細部が精密に描写されています。
女性の角状の髪飾りの刺繍や髪飾りの留め具の描写などがとても精密に描かれています。
一方で女性の表情の陰影はイタリアルネサンスの描写の印象を受けます。
マサイスは、女性が求婚している表現として手に花を持たせていますが、花は蕾のままで求婚がみのることがないことを表現しています。
レオナルド・ダ・ヴィンチの素描
レオナルド・ダ・ヴィンチが本作品と同じ女性の素描を描いていたことから、しばらくレオナルド・ダ・ヴィンチの作品とされていました。
「醜い頭部」(レオナルド・ダ・ヴィンチの素描)
(1490年頃)
マサイスが1513年頃に作品を完成させていることから、1490年頃に素描を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチの作品、もしくはレオナルド・ダ・ヴィンチの素描をもとにマサイスが描いたと考えらていました。
しかし、近年、本作品の下に下書きが描かれており、下書きは1490年以前に描かれていたことが判明し、レオナルド・ダ・ヴィンチの方がマサイスの下書きをもとに素描したと判明しまし。
対の作品
また、本作品は対の作品となっており、もう一方は「老人の肖像」という作品です。
「老人の肖像」
(1513年頃)
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