ルーベンスの弟子で自身はフランドル出身でしたが、イギリス宮廷画家として成功したアンソニー・ヴァン・ダイクの作品「チャールズ1世の三面肖像画」です。
ヴァン・ダイクは、ナイトの爵位を与えられるなどチャールズ1世や王妃に厚遇され、イギリス王室をはじめイギリス貴族の多くの肖像画を描いています。
本作品は、チャールズ1世の胸像を制作するための資料として王妃からの依頼を受けて制作された作品です。
本資料を基に完成した胸像はとても精巧で賞賛されたため、王妃も自身の胸像を発注するのに伴い、資料としてヴァン・ダイクに肖像画を依頼し制作してもらっています。
作品 チャールズ1世の三面肖像画
ヴァン・ダイクは、雇い主のチャールズ1世の肖像画を多く制作していますが、本作品「チャールズ1世の三面肖像画」は、そのなかでも有名な肖像画となっています。
「チャールズ1世の三面肖像画」
(1635-1636年)
それぞれに違う服装をしたチャールズ1世を右側面、正面、4分の3正面と描き、胸像の作成の資料として3方面から描いています。
当時流行していた長髪を左側に結んでたらす髪型でそれぞれの肖像画が同一人物が三方面から描かれていることが示されています。
胸像制作の資料として制作された肖像画にも関わらず、それぞれを違う服装で描き、背景の空を描くなど資料以上の芸術的作品としています。
本作品をもとにイタリアの著名な彫刻家によって制作された胸像はとても賞賛されたため、王妃も自身の胸像を注文するため、資料としてヴァン・ダイクに肖像画を依頼しています。
「王妃ヘンリエッタ・マリアの三重肖像画」
(1638年)
内戦が発生したため王妃の肖像画はイタリアへ贈られることはなく、彫像も制作されることはありませんでした。
また、チャールズ1世の彫像も火災の為、失われてしまっています。
ヴァン・ダイクは三面肖像画を制作するにあたり、当時、チャールズ1世がコレクションしていたロレンツィオ・ロットの「金細工師の三重肖像画」を参考にしたのではないかと言われています。
「金細工師の三重肖像画」
(1525-1535年)
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