本作品「聖パウロの回心」はバロック様式の形成に大きく影響をもたらした巨匠ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオが描いた作品です。
本作品は、サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂のチェラージ礼拝堂に聖パウロと聖ペトロを題材にした装飾画を作成してほしいとの注文を受けて制作されました。
そのため、聖ペトロを題材にした「聖ペトロの磔刑」という作品とともに礼拝堂に納められ、対の作品となっています。
本作品は、最初の作品の受け取りを拒否されて、再度制作された二作目の作品です。
作品 聖パウロの回心
聖パウロがまだユダヤ教徒の時代、パウロはキリスト教の迫害に熱心でした。
本作品は、キリスト教迫害の為パウロがダマスカスに向かう途中に、突然、天から強い光に打たれイエス・キリストの声を聴く場面を描いています。
「聖パウロの回心」
(1600年)
![](https://www.tabitobijutsukan.com/wp-content/uploads/2023/06/image-77-780x1024.png)
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ
「聖パウロの回心」
サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂チェラージ礼拝堂蔵
(イタリア ローマ)
パウロが天から突然の光に打たれ、驚いて落馬した場面が描かれています。画面外の右から光が描かれ、パウロを照らしており、パウロがイエス・キリストの声を聴いている様子です。
![](https://www.tabitobijutsukan.com/wp-content/uploads/2023/06/image-78.png)
イエス・キリストの声は、パウロにしか聞こえておらず、馬を引く男性は全く気にも留めていない様子で馬に気を取られています。
![](https://www.tabitobijutsukan.com/wp-content/uploads/2023/06/image-80.png)
カラヴァジョは、主人公ではない馬を引く男性や馬も細かく描写し、より場面に現実味を持たせています。男性の足に浮き出ている血管まで描写しています。
本作品は、一作目が注文主に受け取りを拒否され、再度制作された二作目です。
一作目は、本作品と違い登場人物も多く、イエス・キリストと天使も描かれています。
「聖パウロの回心」(一作目)
(1600年)
![](https://www.tabitobijutsukan.com/wp-content/uploads/2023/06/image-81.png)
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ
「聖パウロの回心」(一作目)
オデスカルキ・コレクション(イタリア ブラチアーノ)
受け取りを拒否された理由は判明していませんが、二作目とは全く印象が違う作品となっています。
馬の世話人が天使とキリストに槍を向けており、聖書の劇的な場面の描写にそぐわなかったのかもしれません。またイエス・キリストも神々しくは描かれていないようです。
![](https://www.tabitobijutsukan.com/wp-content/uploads/2023/06/image-82.png)
また、本作品は、「聖ペトロの磔刑」と対の作品となっています。
本作品「聖パウロの回心」の一作目と二作目の作風やイメージが大きくことなっていることから「聖ペトロの磔刑」も同様に一作目は受け取りを拒否され、二作目の作品ではないかと言われています。
「聖ペトロの磔刑」
(1600年)
![](https://www.tabitobijutsukan.com/wp-content/uploads/2023/06/image-84.png)
カラヴァジョ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ
「聖ペトロの磔刑」
サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂チェラージ礼拝堂蔵
(イタリア ローマ)
![](https://www14.a8.net/0.gif?a8mat=3ZB81O+5X57CI+54O2+614CX)
コメント