19世紀フランスの画家でサロンにも幾度と入選しながらも、印象派展のきっかけとなる独自の展覧会を他の画家たちと構想したフレデリック・バジールの作品「村の眺め」です。
村の名前をとったキャステルノー=ル=レイズの眺めとも呼ばれることがあります。
バジールは裕福な家庭の出身で、後に印象派の代表的画家となるモネやルノワールなどを支援もしていました。
バジール自身は何度かサロンに入選していましたが、サロンの審査に不満を抱いており他の画家たちととともに後の印象派展となる展覧会を考えていました。
しかし、1870年に普仏戦争が勃発し、志願して参戦したバジールは戦死してしまい、彼の意志は他の仲間に受け継がれ、第一回印象派展が1874年に開催されます。
作品 村の眺め(キャステルノー=ル=レイズの眺め)
本作品は、ブドウ栽培業者で南仏のモンペリエの名門の家出身のバジールが夏にパリから実家に帰郷した際に制作した作品のなかの一枚です。
モデルは、バジール家の庭師の娘だと言われています。
「村の眺め(キャステルノー=ル=レイズの眺め)」
(1868年)
印象派は戸外で自然光の中で作品を制作することを好みましたが、本作品は初期印象派のなかで戸外の肖像画の代表的作品と言われています。
後景に描かれた作品の題名ともなっている村、キャステルノー=ル=レイズが一番明るく描かれ、少女は背後の樫の木の木陰で柔らかい光のなかで描かれています。
少女の服装や頭のリボンは背景の緑と補色関係となるオレンジ色で描かれています。
また、白い服は背景の緑と対象的な色彩で、木陰のなかの少女を引き立てています。
画中の少女の顔や体は、少し中心からずれて描かれています。最も明るく描かれている村に鑑賞者の視線が行ってしまいそうですが、少しの違和感から少女に視線が向かうようにしていると思われます。
補色や対比させた色彩や光の描写は、鑑賞者に穏やかな印象をあたえてつつ、人物配置から視線を誘導させているようです。
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