メアリー・カサット 「バルコニーにて」

絵画

印象派の代表的な女流画家のひとりメアリー・カサットのキャリア初期の作品「バルコニーにて」です。

カサットはアメリカ人画家ですがキャリア前半はヨーロッパ各地での制作活動が主なものとなっています。

本作品「バルコニーにて」もスペイン滞在期にスペイン絵画の巨匠ベラスケスムリーリョゴヤの影響を受けて制作されたのが伺える作品です。

母子の様子を描いた作品が多いカサットの作品のなかでも趣が違う作品で、明暗対比、写実主義的な描写は印象派の画家としては異色な作品です。

作品 バルコニーにて

本作品はカサットがスペインに滞在してムリーリョゴヤを研究、その画風を取り入れて描いた作品です。

バルコニーにて
1873-1874年

1873-1874年
メアリー・カサット
「バルコニーにて」
フィラデルフィア美術館蔵(アメリカ フィラデルフィア)

明暗対比で部屋の奥は暗く、男性にはほとんど光が当たっていない一方で、女性には光があたっています。特に白い服の女性に光をあて鑑賞者に印象付けていまうす。

また、隣の女性の赤い服と対比させることで、より白い服の女性を際立たせています。

明暗対比のなか、女性が挑発的な視線を男性におくる様子を描いた本作品は、母子の様子を描いた作品が多いカサットの作品のなかでは、異色な作品です。

カサットは、スペイン滞在時にスペイン絵画の巨匠ムリーリョやゴヤを熱心に研究しており、二人の巨匠の作品から大きな影響を受けて本作品の制作に至っているようです。

窓辺の二人の女性」(バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
1655-1660年

1655-1660年
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
「窓辺の二人の女性」
ナショナル・ギャラリー(アメリカ ワシントンD.C.)

バルコニーのマハたち」(フランシスコ・デ・ゴヤ
1800-1812年

1800-1812年
フランシスコ・デ・ゴヤ
「バルコニーのマハたち」
個人蔵

また、先進的な作品を多く発表し、印象派の先駆的な画家エドゥアール・マネが本作品の数年前に「バルコニー」という作品を発表しており、意識したのかもしれません。

バルコニー」(エドゥアール・マネ
1868-1869年

1868-1869年
エドゥアール・マネ
「バルコニー」
オルセー美術館蔵(フランス パリ)

本作品「バルコニーにて」は部屋の奥を明暗対比して、快楽的な男女が描かれいますが、男性の左手と赤い服の女性の左手、赤い服の女性の目線と男性の口元、白い女性の視線と男性の視線で対角線ができています。

白い女性だけに光があたっており、画面構成上でバランスが崩れそうですが、視線を自然に対角線上に誘導することで、バランスの取れた構成にしていると思われます。

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