オランダ黄金期の巨匠レンブラント・ファン・レインの作品「書斎のミネルヴァ」です。
ミネルヴァとは、知恵と戦いのギリシャ神話の女神アテナのローマ神話での呼び名です。
戦いの象徴である甲冑を背後に、知恵の象徴である読書を妨げられた様子で鑑賞者の方へ顔を向けるミネルヴァが描かれています。
本作品は、戦いの女神のミネルヴァの様子で当時のオランダの政治的状況を描いているとの解釈がされています。
作品 書斎のミネルヴァ
暗い背景に左からの光に照らされた威厳のあるミネルヴァが描かれています。レンブラントはミネルヴァの描写を通じて当時のオランダの政治的状況を描いているとの解釈があります。
「書斎のミネルヴァ」
(1635年)
本作品が完成した1635年、スペインからの独立を目指し戦争中であったオランダはフランスと協力して南オランダへの侵攻を決定していましたが、一部、オランダ内からの反対もあったようで、その反対派に向けた作品との解釈があります。
作品中央には重厚なドレスやマントで威厳のある様子でミネルヴァが描かれています。ミネルヴァは読書を妨げられた様子です。
手元にはそれまで読んでいた知恵の象徴の本が描かれています。
後方には戦いの象徴である甲冑が描かれ、描かれている女性が戦いと知恵の女神ミネルヴァであることがすぐにわかるようになっています。
ミネルヴァは戦い、知恵の他に芸術の守護者でもあり、レンブラントのような芸術家にとっても当時の政治的状況は今後の自身の生活にとってお重要であった思われます。
本作品の目を見開いて鑑賞者をみるミネルヴァの表情は、甲冑を置いておいた知恵の女神が戦いの女神へ役割を変える意思を示した場面を描いたとも考えられます。
レンブラントは同様の題材で本作品の4年前に「書斎のミネルヴァ」を描いています。
「書斎のミネルヴァ」
(1631年)
この作品でも甲冑を背後に、読書中に気をそらされたミネルヴァが描かれていますが、4年後の作品の方がメッセージ性が強いものとなっている印象です。
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