ルネサンス盛期のイタリア フィレンツェで活躍した画家サンドロ・ボッティチェッリの作品「パラスとケンタウロス」です。
パラスはギリシャ神話の女神アテナの別名で、戦いや知恵などの女神です。
ケンタウロスは、本能的で野蛮、欲望、好色の象徴として描かれることから知恵と戦いの女神パラスが欲望と好色の象徴であるケンタウロスを圧倒している様子が描かれています。
本作品は、当時フィレンツェで隆盛を誇ったメディチ家からの注文で制作されたと考えられ、パラスの服にはメディチ家の紋章が描かれています。
作品 パラスとケンタウロス
本作品は、野蛮、欲望の象徴であるケンタウロスの様子と知性や芸術、戦いの象徴となる女神パラスを対比し、知性が本能を制することを表現していると思われます。
「パラスとケンタウロス」
(1482年)
注文主は、フィレンツェを実質支配してたメディチ家で、メディチ家の最盛期の当主で多くの芸術家を支援したロレンツォ・デ・メディチと言われています。
女神パラスの服にはメディチ家の3つの指輪の紋章が描かれています。
女神パラス(アテナ)を表すオリーブの枝が絡まり、頭では王冠のようになっています。
作品は、パラスがケンタウロスを捉えた場面を描いており、ケンタウロスは顔をしかめてパラスを見返しています。
一方、パラスの目線はケンタウロスには向いておらず、どこか遠くをみているようです。
パラスは、捕らえたケンタウロスとは違う、超越した立場にいるような印象を受けます。
ケンタウロスは、左手の中指を曲げていることから、弓を引こうとしていたところをパラスに捕らえれらたのかもしれません。
ちょうど欲望に負けそうなところを知性が勝ったような印象です。
本作品をメディチ家が発注した背景として、当時、行われていた戦争にメディチ家が勝利したことを表現するため、ケンタウロスを争った相手、パラスをメディチ家として描いたと言われています。
また、近年では当時流行していた新プラトン主義という人間の魂と肉体の関係を表し、魂が肉体を超越するという思想を表現しているとの説が有力となってきているようです。
本作品は、ボッティチェッリの代表作でもありますが、他の代表作「プリマヴェーラ」の対の作品と考えられています。
「プリマヴェーラ」
(1842年頃)
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