ハンス・ホルバインは、ドイツ人がイギリス宮廷の宮廷画家となり主にイギリスで活躍した画家です。
当時のイングランド王のヘンリー8世に大いに気に入られてヘンリー8世をはじめ多くの宮廷関係者の肖像画を制作しています。
本作品は、フランス王フランソワ1世からヘンリー8世に派遣された大使2名を描いています。
大使達とともに様々なものを描き、世俗と宗教、天井と地上などいろいろな対比が描かれています。
また、床にはアナモルフォーシスという技法で頭蓋骨が描かれています。
作品 大使たち
作品の左側に立っているのは、ポリジー領主のジャン・ド・ダントヴィルという人物。右側に立っているのは司教ジョルジュ・ド・セルヴという人物。
2人は世俗と宗教を対比していると考えられています。
「大使たち」
(1533年)
二人の間の棚にはいろいろな物が描かれています。
棚の上の段は左から①天球儀、②日時計、③象限機(天体観測の際に使う道具)、④日時計が描かれています。
下の棚には、左から①地球儀、②リュートが描かれています。地球儀は転がる状態で描かれ、リュートは弦が一本切れており儚さを描いています。
上と下の段では上段で天界を下段で地上階(人間界)を対比しています。
作品左上に小さく磔にされたイエス・キリスト像が小さく描かれ、死後の救いが表現されています。
床に描かれた頭蓋骨
床には左からみると頭蓋骨とわかる模様が描かれています。当時のヨーロッパで流行った手法だそうです。
床の歪んだ模様を左から鋭角にみると頭蓋骨が現れます。
アナモルフォーシスという技法でレオナルド・ダ・ヴィンチが開発したとも言われています。
ホルバインが何故、頭蓋骨をアナモルフォーシスで描いたかは、若い知性の溢れた大使たちもいずれ死がおとずれる。人間の英知や知性も儚いもの。技量を示したかったもの。など言われていますがはっきり分かっていません。
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