印象派を代表する画家ピエール=オーギュスト・ルノワールのキャリア最初期の作品「小さな貴婦人 ロメーヌ・ラコー嬢」です。
キャリア最初期の本作品には、まだ、印象派の技法である筆触分割やルノワール特有の明るくあたたかな色彩描写は見られません。
まだ、過去の巨匠たちの技法や表現方法を研究、取り込もうとしている時期の作品です。
本作品のモデルの少女ロメール・ラコー嬢は磁器の製造業を営むラコー夫妻の娘ロメールで、夫妻がルノワールに注文して描かれました。
作品 小さな貴婦人 ロメーヌ・ラコー嬢
ルノワールのキャリア最初期の作品ですが、本作品の制作と同年にサロンに初入選しており、画家としてのキャリアが本格的に始まった時期でもあります。
本作品は磁器製造業を営んでいた夫妻から注文をうけて制作しています。磁器の絵付け職人であったルノワールへの夫妻の支援の気持ちもあったのかもしれません。
「小さな貴婦人 ロメーヌ・ラコー嬢」
(1864年)
モデルは夫妻の娘ロメーヌで、絵画のモデルとなることは初めてで、緊張している様子が伺えます。
緊張して表情もかたい様子をルノワールは描写しています。モデルが正面を見つめる描写は、古典的な肖像画の描写です。後に印象派の代表的画家となるルノワールの描写技法はまだ見られません。
少女の後ろには花々が描かれています。ルノワールは磁器の絵付け師の後、扇子の装飾を仕事にしていた時期があり、扇子に華やかで甘美なロココ調の代表的画家ブーシェやヴァトーの作品を描いたようです。
本作品にもロココ調的な花々を描いていおり、いろいろな画法を研究していたようです。
「ポンパドゥール夫人」(フランソワ・ブーシェ)
(1756年)
少女の服装及び背景のカーテンの色などは硬質で抑制された色彩で描かれており、コローの影響が見られると言われています。
「真珠の女」(ジャン=バティスト・カミーユ・コロー)
(1858‐1868年)
後にルノワールは印象派の代表的画家と言われるようになりますが、本作品「小さな貴婦人 ロメーヌ・ラコー嬢」はルノワールが貪欲に巨匠たちの画法を学び吸収しようとしていたのが分かる作品となっています。
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