バロックの代表的画家ピーテル・ハウル・ルーベンスのキャリア初期の作品です。
ルーベンスは1600年から1608年の間、古代から近代の各絵画について学ぶためイタリアを訪れ、ティツィアーノやイタリア・ルネサンスの他の巨匠から大きな影響をうけます。
本作品はルーベンスのイタリア時代の1606-1608年頃に制作されています。
ルーベンスは生涯、本作品を手放すことなく死後、スペイン国王に購入されています。
聖ゲオルギウス
聖ゲオルギウスとはキリスト教の聖人で軍人です。
竜退治の伝説がキリスト教の聖人たちの伝説を記した黄金伝説に記載されており、多くの画家たちが題材として描いています。
リビアのある街では近隣に住むドラゴンに苦しめられ、最初は家畜を生贄として差し出していたが、家畜が尽きた後は人間を生贄として差し出していました。
聖ゲオルギウスがその街を訪れた際は、王女が生贄として差し出されるところで、聖ゲオルギウスがドラゴンを倒し、王女を助け、それを見た街の人々がキリスト教へ改宗したという伝説です。
「聖ゲオルギウスと竜」(ラファエロ・サンティ)
(1504-1506年)
作品:聖ゲオルギウスと竜
「聖ゲオルギウスと竜」(ピーテル・ハウル・ルーベンス)
(1606-1608年)
対角線上に白馬と聖ゲオルギウスが描かれ、白馬を境にして右下を悪、右上を善となるような配置がされています。
王女が子羊
聖ゲオルギウスに助けられる王女が左端に描かれています。王女は平和の印として右手を上げ左手で子羊の足を持っています。
王女は保護の対象となる教会を意味し、子羊はイエス・キリストを表しています。
聖ゲオルギウス十字
聖ゲオルギウスを象徴する色は白と赤となっており、本作品でも兜の羽とマントで表現されています。
聖ゲオルギウスと竜の話は、ヨーロッパ一円にひろまっており、ヨーロッパ各地で聖ゲオルギウスの白と赤を使用した国旗、紋章が多く作られました。
イングランドの国旗などにもちいられている白地の赤い十字を聖ゲオルギウス十字と呼ばれ、ヨーロッパ各地で聖ゲオルギウス十字をベースにした旗が使用されています。
聖ゲオルギウス十字(セント・ジョーンズ・クロス)(イングランドの国旗)
ミラノの紋章
ジョージアの国旗
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